Python入門
Pythonの引数は参照渡しだが・・・

Pythonの初心者向け入門解説、人気のプログラミング言語Python
公開日:2020-09-21 最終更新日:2020-09-21

第16回.Pythonの引数は参照渡しだが・・・


Python 参照渡し 関数 引数

関数やメソッドの引数に渡す方法としては、「参照渡し」と「値渡し」があります。
Pythonはすべて参照渡しであり、値渡しを指定する書き方は用意されていません。
では、Pythonの参照渡しとはどういうものか・・・


関数全般については、以下3回に渡ってやってきました。
第13回.関数の定義(def文)と引数
・関数の呼び出し ・関数オブジェクト ・いろいろな引数指定 ・関数のDocstring
第14回.関数内関数(関数のネスト)とスコープ
・関数内関数(関数のネスト) ・スコープとは ・ローカルスコープ(Local scope) ・エンクロージングスコープ(Enclosing scope) ・グローバルスコープ(Global Scope) ・ビルトインスコープ(Built-in scope) ・ミュータブルのコンテナオブジェクトの値は書き換えられる
第15回.lambda(ラムダ式、無名関数)と三項演算子
・lambda(ラムダ式)の基本 ・lambdaの使い方:print()関数 ・lambdaの使い方:sorted()関数 ・三項演算子:lambdaで条件分岐 ・filter()関数とlambda(ラムダ式) ・map()関数とlambda(ラムダ式)

今回は関数の最後として 、
引数や戻り値はどのように渡されるかについて、実際のスクリプで確認していきます。



目次

参照渡しと値渡し

「参照渡し」とは、変数のid(識別値、アドレス)を渡します。
「値渡し」とは、変数に入っている値をコピーして渡します。

単純な説明としては、

参照渡し」では、
関数内で仮引数の値を変更した場合、呼び出し元の実引数の値も変更されます。
値渡し」では、
関数内で仮引数の値を変更しても、呼び出し元の実引数の値は変更されません。

しかし、オブジェクトはそもそも変数に値が入っているわけではありません。
変数には、オブジェクトのid(識別値、アドレス)が入っています。
参照渡しで渡すものはこのidを渡しています。

Pythonでは、数値や文字列を含めすべての値はオブジェクトです
つまり、引数へ渡すのはオブジェクトのidという事になります。
その結果してどのような挙動になるかを具体的なスクリプトで見ていきます。


これまでの復習:前提知識

変数の識別値(アドレス)を取得するid()関数

変数にはそれを識別するid(識別値、アドレス)があります。
識別値は、id()関数で取得できます。

id(object)

id()関数は、オブジェクトの識別値(アドレス)を返します。
識別値は整数で、そのオブジェクトの有効期間中は一意かつ定数であることが保証されています。
有効期間が重ならない(同時に存在しない)2 つのオブジェクトは同じ id()値を持つ事はありえます。


別の変数への代入

変数は始めて変数名を記述した時点で定義されます。

変数を別の変数に代入した場合は、実体が同じ(つまり同じid)変数になります。
変数 = 値
別の変数 = 変数
変数 = "値"
print(id(変数))
別の変数 = 変数
print(id(別の変数))
Python 参照渡し 関数 引数

実体が同じ(つまり同じid)なので、片方の変数の値を変更した場合はもう一方も変更されます。
ただし、そもそも値を変更できるのはミュータブルの変数に限ります。

v1 = [1,2,3]
v2 = v1
print(f"{id(v1)=}")
print(v1)
print(f"{id(v2)=}")
print(v2)
print("v1[1] = 99")
v1[1] = 99
print(f"{id(v1)=}")
print(f"{id(v2)=}")
print(v2)
Python 参照渡し 関数 引数

変数に別の値を代入した場合は、別のidになります。
変数 = 値
変数 = 別の値
変数 = "値"
print(id(変数))
変数 = "別の値"
print(id(変数))
Python 参照渡し 関数 引数

これは、元の変数が一旦破棄されて、新たに同じ名前の変数が作られたという事です。

ただしイミュータブルの変数の場合は、
代入する値が元の値と同じ場合は、元の変数は破棄されずそのまま残ります。
変数 = 値
変数 = 同じ値
変数 = "値"
print(id(変数))
変数 = "値"
print(id(変数))
Python 参照渡し 関数 引数

これを期待したスクリプトを作ることは無いと思いますし、
この挙動は保証されているものではないと思います。
※対話モードでは別idになります。

Python 参照渡し 関数 引数

ミュータブルとイミュータブル

Pythonのデータ型には、ミュータブル(immutable)イミュータブル(mutable)があります。
ミュータブルは、オブジェクトの値そのものを変更できるオブジェクトです。
イミュータブルは、オブジェクトの値そのものは変更できないオブジェクトです。

ミュータブルのオブジェクト:list,dict,set
イミュータブルのオブジェクト:bool,int,float,complex,str,tuple,range

詳細については以下を参照してください。

Pythonはすべて参照渡しなのですが・・・

Pythonでは、
・引数は参照渡しです。
・戻り値も参照渡しです。
・数値や文字列を含めすべての値はオブジェクトです。
・データ型にはミュータブルとイミュータブルがあります。
これらが相まって少し理解しづらくなっている気がします。

参照渡しは、関数内で仮引数を変更した場合に呼び出し元の実引数が変更されます。
しかし、イミュータブルはそもそも値を変更できません。
そして、変数に再代入した場合は新たに別の変数として作成されます。

結果として、ミュータブル内の要素変更のみ呼び出し元の実引数が変更されます。

これは、イミュータブル内の要素として入っているミュータブルの要素に対しても適用されます。
結論としては、仮引数を変更して実引数に変更を反映させる記述は避けたほうが良いと思います。
ただし、その場合の挙動についてはしっかり理解しておくべきでしょう。

Pythonの引数は参照渡し

def fn(arg):
    print(f"関数受取id={id(arg)}")
v = "abc"
print(f"定義当初id={id(v)}")
rtn = fn(v)
Python 参照渡し 関数 引数

同じidが渡されていることが確認できます。

Pythonは戻り値も参照渡し

def fn(arg):
    print(f"関数受取id={id(arg)}")
    return arg
v = "abc"
print(f"定義当初id={id(v)}")
rtn = fn(v)
print(f"関数戻りid={id(rtn)}")
Python 参照渡し 関数 引数

同じidが戻されていることが確認できます。

変数への再代入は別id

def fn(arg):
    print(f"関数受取id={id(arg)}")
    arg = [1,9,3] #これにより別idになる
    print(f"関数書換id={id(arg)}")
    print(arg)
v = [1,2,3]
print(f"定義当初id={id(v)}")
print(v)
fn(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
print(v) #関数内での仮引数への変更は反映されない
Python 参照渡し 関数 引数

変数への再代入でidが変更されていることが確認できます。

変数への再代入でもミュータブルの同値は同じid

def fn(arg):
    print(f"関数受取id={id(arg)}")
    arg = (1,2,3)
    print(f"関数書換id={id(arg)}")
v = (1,2,3)
print(f"定義当初id={id(v)}")
fn(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
Python 参照渡し 関数 引数

これを期待したスクリプトを作ることは無いと思いますし、
この挙動は保証されているものではないと思います。

ミュータブルの要素変更

def fn(arg):
    print(f"関数受取id={id(arg)}")
    print(arg)
    arg[1] = 9
    print(arg)
    arg.append(4)
    print(arg)
    del arg[0]
    print(arg)
    print(f"関数書換id={id(arg)}")
v = [1,2,3]
print(f"定義当初id={id(v)}")
print(v)
fn(v)
print(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
Python 参照渡し 関数 引数

変数が同じidで値が変更されていることが確認できます。

複合オブジェクトの要素変更

def fn1(arg1):
    def fn2(arg2):
        print(f"fn2 受取id={id(arg2)}")
        arg2[1][0] = 99
        print(f"fn2 書換id={id(arg2)}")
    print(f"fn1 受取id={id(arg1)}")
    fn2(arg1)
    print(f"fn2 の後id={id(arg1)}")
v = (1,[11],3)
print(v)
print(f"定義当初id={id(v)}")
fn1(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
print(v)
Python 参照渡し 関数 引数

タプルの変数のidが変更されることなく、要素として入っているリストの値が変更されていることが確認できます。

可変長の変数も参照渡し

def fn1(a1, a2, a3):
    print(f"関数受取a1={id(a1)}")
    print(f"関数受取a2={id(a2)}")
    print(f"関数受取a3={id(a3)}")
    a3[0] = 99
v1 = 123
v2 = (1,2,3)
v3 = [1,2,3]
print(f"定義当初v1={id(v1)}")
print(f"定義当初v2={id(v2)}")
print(f"定義当初v3={id(v3)}")
fn1(v1, v2, v3)
print(f"関数の後v1={id(v1)}")
print(f"関数の後v2={id(v2)}")
print(f"関数の後v3={id(v3)}")
print(v3) #listは値が変更される
Python 参照渡し 関数 引数

可変長の引数すべてが参照渡し(同じid)になっていることが確認できます。




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