エクセル雑感
エクセルで連立方程式を解く(MINVERSE,MMULT)

ExcelマクロVBAとエクセル関数についての私的雑感
公開日:2020-02-07 最終更新日:2020-02-07

エクセルで連立方程式を解く(MINVERSE,MMULT)


とつぜん連立方程式を解くことになりました。
なぜ連立方程式を解くことになったのか、そして、どうやって答えを導き出したのか・・・
これらを自身の覚え書きの意味も含めて記事にしておきます。
ただし、行列の難しい説明は抜かして、どうやって解決したかの経緯の説明が中心になります。


連立方程式を解くことになった経緯

経緯としては、以下の記事内で件数を増やしたときの予測数値を算出したいと思ったからです。
Dictionary(ディクショナリー)のパフォーマンスについて
Dictionary(ディクショナリー)は辞書機能で、連想配列とも呼ばれます。この辞書は、重複は許されず、キーとデータの2つが存在します、今回はこのDictionaryのパフォーマンス(処理速度)を検証します。Dictionaryの基本的な使い方については、こちらを参照してください。
この記事は数年前に書いたものですが、最新のOffice365で再検証して書き直ししました。
この中で、速度実測した結果があります。
1万件で、12秒
2万件で、44秒
3万件で、106秒
件数に対して、指数的に増加しているように見受けられます。

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

そこで一般的な2次方程式に当てはめてみることにしました。

y = ax^2 + bx + c

この式に、1万件を1として当てはめてみると、

12 = a + b + c
44 = 4a + 2b + c
106 = 9a + 3b + c

このようになります。
つまり、この連立3元1次方程式を解いてa,b,cを求めれば良いということです。

もともとの記事を書いたときには、紙と鉛筆で計算したのだろうと思います。
そして今回もとりあえず計算してみたが・・・出た答えはどうみても正しくない。
途中で計算を間違えたようです。
やり直しても良いのですが、せっかく目の前に超優秀な助手がいるのですから、お手伝いしてもらう事にしました。
そうです、エクセルで連立方程式を解くことにしました。
しかし、ここで解決しなければならない問題があります。
私は、エクセルで連立方程式を解いたことが無い・・・

解らないことはグーグル大先生に聞くしかありません。
参考に読んだ記事はいくつもあります。
ググればいっぱい出てきますので、興味があれば検索してみてください。
たくさん出てきましたが、どこもほぼ同じ、
MINVERSE関数とMMULT関数を使えば簡単に求められる
なるほど、そうですか、
連立方程式を行列にして解けは良いのですね。
そして、その時に使う関数が、MINVERSE関数とMMULT関数なのですね。

MINVERSE関数

MINVERSE 関数は、配列に格納されている行列の逆行列を返します。

MINVERSE(配列)

行数と列数が等しい数値配列 (正方行列) を指定します。

MMULT関数

MMULT関数は、2つの配列の行列積を返します。

MMULT(配列1, 配列2)

配列1および配列2には、行列積を求める2つの配列を指定します。
計算結果は、行数が配列1と同じで、列数が配列2と同じ配列になります。

連立方程式を行列にする

12 = a + b + c
44 = 4a + 2b + c
106 = 9a + 3b + c

これを行列で表現すると、

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

こういう事になるらしい。(らしいって(笑))
行列積は以下のようになります。

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

つまり、これの逆順で連立方程式を行列にします。

a,b,cの係数を抜き出してそのまま並べれば良いだけです。
こうなればなんとなく分かってきました、a,b,cを求めるには、

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

-1というのは逆行列で、このように記述するらしい。
これを見ると、確かにこれで計算できるのは理解できます。
そして、
逆行列を求めるには、MINVERSE関数を使えば良い。
行列の掛け算は、MMULT関数を使えば良い。
ここまでわかれば、あとはエクセルに数式を入れるだけですね。

MINVERSE関数とMMULT関数をエクセルに入れる

MINVERSE関数を入れる

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

上記はスピルしていますので、スピルしないエクセルの場合は、
A5:C7を選択して、
=MINVERSE(A1:C3)
これを、Ctrl+Shift+Entreで配列数式として入れてください。
{=MINVERSE(A1:C3)}

A5:C7がA1:C3の逆行列という事になります。
出てきた数値が何を意味するか・・・とりあえずあまり考えずに進みます。

MMULT関数を入れる

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

VBA マクロ 連立方程式 MINVERSE MMULT

上記はスピルしていますので、スピルしないエクセルの場合は、
G5:G7を選択して、
=MMULT(A5#,K1:K3)
これを、Ctrl+Shift+Entreで配列数式として入れてください。
{=MMULT(A5#,K1:K3)}

MMULT関数の注意点
MMULT(配列1, 配列2)
計算結果は、行数が配列1と同じで列数が配列2と同じ配列になります。
したがって、引数の順番を入れ替えてはダメです。

結果を検算してみる

上記でa,b,cが求められました。
a = 15
b = -13
c = 10
これを使って2次方程式を計算してみます。

y = 15x^2 - 13x + 10
x = 1 → y = 12
x = 2 → y = 44
x = 3 → y = 106

計算結果は正しいようです。
では、x = 10とした場合は、
x = 10 → y = 1380
これは秒数ですので、23分です。
つまり先の記事の例では、10万件で実行した場合23分かかるという予測になります。

エクセルで連立方程式を解くの最後に

ここまでの説明で意図的にスルーしたのですが、逆行列の求め方が難しい・・・
興味のある方は検索してみてください、高校・大学数学として解説しているページが多数でてきます。
簡易的にでも説明ができないかと思ったのですが、とてもそんなレベルでは説明できそうにありません。
と言いますか、そもそも私がちゃんと理解できていない・・・

という事で、今回はあくのでエクセルで連立方程式を解く場合の手順を淡々と説明してみました。



同じテーマ「エクセル雑感」の記事

プログラミングとは

コンピューター(PC)は、こと計算については天才的な能力を持つが、その他の事については一般人の常識が通用しない子供のような存在です、人間で言うなら、サヴァン症候群でしょう、サヴァン症候群のPCに対して何かをしてもらいたい時に、それを文章で伝えるものがプログラムです。従って、プログラミングでは、あなたの常識は一切通用…
「ネ申Excel」問題 への同意と反論
「ネ申Excel」、私は流行に疎いので、ネ申の意味が最初分からなかった、どうやら、「神Excel」のことのようです、大学教授が書いた、Excelの問題点と解決策の提案がかかれた論文です、この論文に対する、私なりの同意と反論です。Excelを論ずるのに、なぜネ申などという言葉を使ったのか、私には少々理解しがたい部分も…
「Excel3ステップ理論」3階層システムの応用
エクセルでシステムを作成する時に、念頭に置くべき3階層の考え方になります、本来はExcelに限った事ではなく、システム作成では常に3階層を考えて設計しますが、さらに考えを推し進めて3ステップとして考えます、つまり、「Excel3ステップ理論」です。データを入力するシートで、さらに集計し、さらに印刷までやろうとしたら、
「ポケモンを確実に見つける方法」をExcelで数学してみた
ポケモンGO関連の記事をみていたら、【ポケモンGO】かくれているポケモンを確実に見つける方法、という記事を読んだ。普通にそうだなという感想なのですが、もっとまじめに数学したら、もっと良い方法があるのではないかと。元記事はあちこちで見た気がするが、多分これでしょ 「【ポケモンGO】かくれているポケモンを確実に見つける…
エクセルで「もういくつ寝るとお正月」
今日は2020年1月31日です。早いもので1月が終わろうとしています。つまり、2020年も12分の1がすでに終わろうとしています。この調子では、あっという間に今年(2020年)も終わってしまいそうです。
エクセルで連立方程式を解く(MINVERSE,MMULT)
VBAが消えてしまった!マクロが壊れて動かない!
2020年4月15日に配信されたWindows10用セキュリティ更新プログラムの不具合で、なんと、VBAが全て消えてしまうという事が発生しています。今後もあり得る事なので、このような場合の対策について記しておきます。VBAが消えてしまうとはどんな状態なのか エクセルファイルを開くと、以下のようなメッセージが出力され…
スピらない スピル数式 スピらせる
タイトルというのはなかなか難しい。当初思ったお題は、・スピらぬなら壊してしまえスピル数式 ・スピらぬならスピらせてみようスピル数式 ・スピらぬならスピルまで待とうスピル数式 もちろん、壊してしまう訳には行かないし、待っていたってスピルする訳ないし… 当然「スピらぬならスピらせてみようスピル数式」と言う事になる。
難しい数式とは何か?
エクセルでは難しい数式は要らない、𝕏ではそんな話を良く目にします。同じことをするのなら、難しいより簡単な方が良い、それは当たり前ですね。では「難しい」とは何を指しているのでしょうか? 普段良く「数字で語る」みたいなことを言いますが、「難しい」の基準もなくそれを計る尺度も存在しない極めて曖昧な話…
いくつかの数式の計算中にリソース不足になりました。
365のエクセルで最近になって急に出始めたエラーメッセージです。「いくつかの数式の計算中にリソース不足になりました。そのため、これらの数式の値を求められません。」何が原因で出力されるメッセージなのでしょうか… どのような対処をしたら良いのでしょうか… エラーメッセージの詳細 かつて見た覚えのないメッセージです。
無効な前方参照か、コンパイルされていない種類への参照です。
365のエクセルで最近(2023年の後半くらい)になって急に出始めたエラーメッセージです。いくつかのプログ等で対策が書かれているのを見かけましたが、これと言った決め手も無さそうに見受けられました。つまり、書かれている方法で解決した人もいれば解決しない人もいるといった状況に見受けられます。


新着記事NEW ・・・新着記事一覧を見る

ブール型(Boolean)のis変数・フラグについて|VBA技術解説(2024-04-05)
テキストの内容によって図形を削除する|VBA技術解説(2024-04-02)
ExcelマクロVBA入門目次|エクセルの神髄(2024-03-20)
VBA10大躓きポイント(初心者が躓きやすいポイント)|VBA技術解説(2024-03-05)
テンキーのスクリーンキーボード作成|ユーザーフォーム入門(2024-02-26)
無効な前方参照か、コンパイルされていない種類への参照です。|エクセル雑感(2024-02-17)
初級脱出10問パック|VBA練習問題(2024-01-24)
累計を求める数式あれこれ|エクセル関数応用(2024-01-22)
複数の文字列を検索して置換するSUBSTITUTE|エクセル入門(2024-01-03)
いくつかの数式の計算中にリソース不足になりました。|エクセル雑感(2023-12-28)


アクセスランキング ・・・ ランキング一覧を見る

1.最終行の取得(End,Rows.Count)|VBA入門
2.セルのコピー&値の貼り付け(PasteSpecial)|VBA入門
3.RangeとCellsの使い方|VBA入門
4.ひらがな⇔カタカナの変換|エクセル基本操作
5.繰り返し処理(For Next)|VBA入門
6.変数宣言のDimとデータ型|VBA入門
7.ブックを閉じる・保存(Close,Save,SaveAs)|VBA入門
8.並べ替え(Sort)|VBA入門
9.セルのクリア(Clear,ClearContents)|VBA入門
10.Findメソッド(Find,FindNext,FindPrevious)|VBA入門




このサイトがお役に立ちましたら「シェア」「Bookmark」をお願いいたします。


記述には細心の注意をしたつもりですが、
間違いやご指摘がありましたら、「お問い合わせ」からお知らせいただけると幸いです。
掲載のVBAコードは動作を保証するものではなく、あくまでVBA学習のサンプルとして掲載しています。
掲載のVBAコードは自己責任でご使用ください。万一データ破損等の損害が発生しても責任は負いません。


このサイトがお役に立ちましたら「シェア」「Bookmark」をお願いいたします。
本文下部へ